スパルタすぎる臨床実習、漫画みたいなレポートの量、眠れない日々、理不尽なSV、そんな試練を乗り越えてのPTデビュー。 働き出してからも症例検討や勉強会の雨嵐・・・、夜行バスでの地方遠征(勉強会)だってザラにある。厳しい修行に、愚痴の一つだってこぼしたくもなるという方・・・ちょっと待った!違う業界からみるとPT業界の若手育成って、実はすごいんです。
鍼灸師と理学療法士で対談してみました。

 

◆鍼灸師:紅露先生◆

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西洋医学治療に長けた鍼灸接骨院と、東洋医学治療に長けた鍼灸院で修行を重ね、2015年7月に東西両医学の共存をコンセプトとした紅露養生院(兵庫県宝塚市)を開業。余計なエゴは一切捨て患者さまの症状を改善する事だけに全力を注いで施術する事が心情。 資格:はり師、きゅう師、あん摩マッサージ指圧師、登録販売者、JATAC認定アスレチックトレーナー

 

◆理学療法士:西村先生◆

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総合病院にて急性期から回復期のリハビリテーション医療に従事したのち整形外科クリニックに勤務後、NLP(*1)や心理学、栄養学を学び、パーソナルトレーナーとして活動していた異色のPT。現在はリハビリ特化型の西大阪訪問看護ステーションに所属。在宅医療・介護分野でリハビリテーションに従事。 *1 米国発のカウンセリング等に利用されることが多いコミュニケーションの手法のこと。


鍼灸師とPTは競合しない!?

PT:何がキッカケで鍼灸師を選んだんですか?

 

鍼灸師:高校生までスポーツ(サッカー)をしていたので、初めはスポーツトレーナーを考えていましたが、当時通院していた鍼灸接骨院の院長から「国家資格の鍼灸免許を取得してからでもトレーナーにはなれる」と勧められ、鍼灸師にしました。

「柔整師は?」と聞かれますが、鍼灸師の方がアプローチできる疾患が多岐に渡るので、鍼灸師にしました。鍼灸で保険治療できる疾患は「神経痛、リウマチ、腰痛症、五十肩、頚腕症候群、頚椎捻挫後遺症」と、柔整師の「捻挫、打撲、挫傷、脱臼・骨折の応急処置」とその数に大差はないですが、保険適応外では、呼吸器系(気管支炎、喘息 等)や消化器系(消化不良、胃下垂 等)などの疾患(*1)にもアプローチでき、その有効性をWHOも認めています。(*1 詳細な疾患は参考URLの5:鍼灸師協会のHPをご参照) PTは、なぜか選択肢に出てきませんでした。(笑)

 

PT:私も高校時代のスポーツ(空手道)からの流れです。試合中に、相手を蹴ったら、自分の足が折れてしまい、競技復帰するために接骨院に通院していました。そこの院長(柔整師、日体協AT、bjリーグトレーナー)が、「開業なら柔整師、治療家の活躍の幅を追求するならPT!」と教えてくれました。あとは、院長が「PTは本当の医療行為が出来るから柔整師にはなるな!」と念押ししたくれたので、PTの道を志すことになりました。

職種は違っても、”治療家としての幅”を重視した点は、同じですね。ただ、鍼灸が理学療法と競合するとは考えられませんか?鍼灸は運動器や呼吸器、消化器系の疾患にも有効とのことですが、理学療法も同様の疾患に対してアプローチ(リハビリ)します。

 

鍼灸師競合していいと思います。治療は、出来れば能動的・受動的な内容の両方が理想です。

週1回でも鍼灸で患者さまの日々のお身体の変化をしっかり観察・治療して、普段のリハビリを保険診療が可能なPTの方にして頂く。そこで鍼灸師とPTがお互いの経過観察を報告し合う事が、患者さまにとってのより良い治療方法となるのではないでしょうか。その為には鍼灸業界がもう少し外に出る事も必要と考えます。

 

PT:確かに、全ての疾患を西洋医学で説明できませんし、全てを理学療法で治すこともできません。鍼灸が東洋医学からの成り立ちだという点でも納得です。

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徹底的な医療者(臨床家)教育、それが臨床実習だ

PT:鍼灸師は、昔からの徒弟制度が強い印象がありますが、学校の臨床実習は、どんなものでしたか?PTは、ブラック(!?)が多いんです。

 

鍼灸師(紅露):ブラックな実習・・・!?少なくとも私の母校(行岡)の実習は、違いました。そもそも、PTのように、病院や施設で実習する形式ではなく、学校の1階を一般開放して、そこで一般の方向けに施術を行う内容でした。

 

PT:意外ですね、PTよりもまっ黒なんじゃないかって想像していました。では、学校で就職支援とかはありましたか?

 

鍼灸師:「独立」という前提があるので、就職支援は大学やPTに比べて少ないのでは?と個人的には感じております。

卒業から7年経ちましたが、同期卒業(27名)で鍼灸師の仕事を続けているのは、5%程度です。行岡の場合は、あん摩の資格(あん摩マッサージ指圧師)も取得できたので、保険を利用した訪問マッサージをされている方が多いです。また、27名の内20名くらいは、社会人経験者だったので、独立志向があっても、修行する時間的な猶予がなく、あんまの資格で就職する人が多かったのかもしれません。

 

PT:PTの実習が”スパルタ”や”ブラック”と言われるのは、PTは、国家試験合格後、日本では医療行為を行えるものとして位置づけられるからだと思います。対象となる疾患や障害の種類・幅が広く、心臓リハや呼吸リハ、新生児リハなど命に関わるリスクが高い業務に携わる可能性だってありますし。

国家試験合格後も多数のPTの就職先が病院です。ようは、人間的な資質が乏しい、治療ができないPTを輩出すると、患者さまに適切な治療が行えないどころか、病院でのPTの評判が下がってしまう。(医師や看護師と比較して)歴史が浅いPTが、病院で築いてきた地位を傷つけてしまうかもしれない。PT業界という枠組みでは、輩出されるPTが勤勉、かつしっかり治療ができる臨床家でなくては、業界自体が廃れてしまうんでしょう。

病院は、患者さまのファーストチョイスになります。そこで適切な治療が受けられないことを阻止するには、”スパルタ”や”ブラック”なんて言ってられませんよね。賛否はあると思いますが、これはPT業界が正常に機能しているひとつの証拠だと思います。

 

 

実はありがたかった、PTの新人教育制度

PT:鍼灸師にも、PTのような症例検討会や勉強会はあるんですか?

 

鍼灸師:もちろん、多岐に渡る勉強会や症例検討会がありますが、特に東洋医学をベースにした鍼灸院で修行していた時は、教えられるというよりも技を伝承していく感じ、まさに修行です。

東洋医学では、筋肉や神経ではなく、経絡(気と血の通り道)上に無数に存在するツボにアプローチします。そのツボを見極めるために、「舌診」「脈診」「腹診」等を行います。この見極め方に、確立された理論は存在するのですが、体系だった教育プログラムが少ないですし、身体に触れる部分は感覚的にしか伝えられない事が多いので、どれだけ個人個人が普段から細かな事に気づきを得て、生活・勉強するかが重要です。

 

PT:PTは、病院等に正社員として雇用される人が多く、定期的に症例検討会があります。守られた環境の中で、しっかり勉強できますし、日本理学療法士協会でも新人教育プログラムが整備されています。そういう流れや制度があることは、大変かもしれませんが、実はありがたかったんですね。今だからこそ、教育制度の有難みに気づきました(笑)。

最近、PT業界でも、独立・開業系のセミナーが増えているのですが、同様のセミナーには行かれたりしたのですか?

 

鍼灸師:私が行ったのは、商工会議所主催の税務関係・起業までの心構えや準備に関するセミナーなので、FAXやネット広告にある胡散臭い(?)と感じたものには、行っておりません。

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PTの強みは組織力!?

PT:鍼灸師からみてPTのここが羨ましいってありますか?

 

鍼灸師:組織力があるところです。組織力とは、養成校の実習、協会の新人教育プログラム、病院での症例検討会と、人材育成の流れが整備されている点です。

 

PT:鍼灸師業界では、職域を広げいこうという風潮はありますか?

 

鍼灸師:少しずつその流れにはなっていますがまだまだ少ないように感じます。 自分で工夫して、職域を広げ、価値観が合う人と、共に成長していく状態です。

そういえば、商工会議所に相談に行ったとき、PTの人が来ていて、体の不自由な方向けの旅行代理店のような事業を相談されていましたね。PTは、独立とかっていうよりも、病院で働いているイメージが強いので、非常に印象的でした。

 

PT:それは印象的ですね!昨今、病院や施設で働き続けることに疑問を抱く、若手のPTが増えています。PTとしての知識・経験・人脈などを活かして、もっと広い世界で活躍できるんじゃないかっていう可能性を探っているんです。

賛否ありますが、個人的には、その考え方には賛成です。ただ、私の場合は、旅行事業のことを考えるよりも、(紅露先生にお会いして)東洋医学の考え方も学んでみたくなりましたね。実際に欧米では理学療法士が鍼を打つことが認められている国もあります。お互いの素敵な所を学び、そして患者さまの治療に役立てたいものですね。

そうすることがお互いの業界の発展にもつながっていくと信じています。

紅露先生、本日は素敵な時間をありがとうございました。  

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(参考HPリスト)
1:公益財団法人東洋療法研修試験財団, 免許登録等の実施, http://www.ahaki.or.jp/registration/enrollment.html, (平成27年8月3日)
2:厚生労働省, 平成26年度衛星行政報告例(就業医療関係者)の概況, http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/eisei/14/, (平成27年8月3日)
3:厚生労働省, 国家試験合格発表, http://www.mhlw.go.jp/general/sikaku/successlist/siken08_09/about.html, (平成27年8月3日)
4:日本柔道整復師会, http://www.shadan-nissei.or.jp/judo/index.html, (平成27年8月3日)
5:日本鍼灸師会, http://www.harikyu.or.jp/general/effect.html, (平成27年8月3日)


編集後記
今回、対談にご協力頂いた紅露先生が開院された紅露養生院をご紹介します。

「忙しい毎日で、自分のことは後回しというあなた。
当院の施術時間だけはご自身のお身体を見つめ直しませんか。
症状の治療は勿論、日々の健康診断のように 末病の段階での定期的なお身体のケアもおこなって頂ける空間を提供致します。(紅露養生院のホームページより引用)

慢性的な疾患をお持ちで、鍼灸の治療興味がある方は、是非、紅露養生院へ! キャリアPTスタッフの前でも、鍼灸治療を実践頂いた紅露養生院、キャリアPTおススメの治療院です!

住所:兵庫県宝塚市泉町19-13 ハイツ後藤1階(中山寺駅近辺)
TEL:0797-75-3925
URL:http://koro-yojoin.main.jp/

 

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