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日本障がい者水泳連盟(JPSF:Japan Para-Swimming Federation)で技術委員を務め、北京、ロンドンパラリンピックに帯同した島PT。

1995年より、障がい者センターでPTとして勤務する傍ら、1997年の全国身体障がい者スポーツ大会(なみはや国体)で大阪府選手団水泳チームコーチ兼トレーナーに選出される。その後も、専門学校(教員)、医療機関、高齢者福祉施設等に勤務しつつも、健常者・障がい者の水泳チームにトレーナーとして携わり続け、2006年にJPSFの技術委員に就任。

2008年の北京、2012年のロンドンパラリンピックの日本選手団水泳チームでトレーナーを務めた島PTにインタビューしてみました。


挑戦することからすべては始まる

― 日本代表チームのジャージ、かっこいいです!どうすれば、パラリンピックに帯同できるようなPTになれるのでしょうか?

:まずは挑戦することではないでしょうか。

私は1995年にPTの国家資格を取得し、それから13年後の2008年(北京パラリンピック)に、初めて日本代表チームに帯同することができました。「どうすれば、なれるのか?」という質問についてですが、絶対になれる方法等はありませんので、「まずは挑戦あるのみ」としか答えられませんね。私が1997年の全国身体障がい者スポーツ大会(なみはや国体)で、大阪府選手団水泳チームのコーチ兼トレーナーに選出された時のお話をさせて頂きましょう。

 

1997年当時、私は経験年数3年目の駆け出しのPTでしたが、PTとしてスポーツに携わり、いつかは日の丸を背負って、日本代表の海外遠征に参加したいと考えていました。

そんな時、なみはや国体の開催に合わせて、大阪府(障がい者の水泳チーム)から、PT協会にトレーナーの公募が出たんです。経験年数が3年目と浅かったこともあり、落選するだろうとは思いつつも、まずは応募してみたんです。もちろん、応募したからには、選出されるために全力を尽くしました。正式に選出されるまでの練習会では「とにかくやりたいんだ!」という熱意を伝え、自身が提供でき得る知識と技術を猛烈にアピールしたことを今でも覚えています。

その結果、幸いにも選出頂けたことで、何事もやってみないと、結果はわからないものだな、と改めて感じましたね。

 

― なみはや国体で、大阪府のチームトレーナーに選出されるまでに、トレーナーのご経験があったのでしょうか?

:はい、PTになってからは、地域の障がい者センターに勤務していたのですが、健常者水泳のトレーナーや障がい者スポーツのサポートも並行して行っていました。

もともと、私自身が水泳部に所属していたこと、スポーツが大好きだったことから、スポーツ分野でも活躍できるPTになりたいと考えていたので、時間を作っては、トレーナー活動に参加していましたね。私自身、興味があることには、とことん熱中するタイプの性格ですので、休日がなくなることに苦痛は感じなかったです。その当時から現在まで、何度かの転職を経験しましたが、どういった職場で働こうとも、トレーナーの活動はかわらず継続してきました。

 

― 日の丸を背負うことを強く意識するようになったきっかけ等が、あったのでしょうか?

:身近な方(PT)が、2000年のシドニーパラリンピックに帯同されたことですかね。

その方とは、日々のトレーナー活動を通じて、接することが多かったのですが、身近な方が選出されたことに刺激を受けて、自分もなれるはずだ、と奮い立ちました。ただ、2004年のアテネパラリンピックまでに、自分が選出されるに至りそうになかったので、2008年のパラリンピック(北京開催)を目標にしたんです。実は、2008年の開催地に、大阪も立候補していたのですが、私は海外遠征に帯同したかったので、内心、地元の大阪が落選しろと思っていましたね。(笑)

結果的に、2008年は北京開催に決まり、私も帯同することができましたので、ひとまず目標は達成できたんです。

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2008年の北京パラリンピックに帯同した島PT

 

 

トレーナーにはアスリートの本気と向き合う覚悟が必要

― 通常(各種医療機関・施設)のPTの仕事と、トレーナーの活動には、どのような違いがあるのでしょうか?

:最も異なるのは、対象となる方のモチベーションです。

通常のPTの仕事では、全ての患者様・利用者様に「もっと良くなりたい」というモチベーションがあるとは限りませんが、トレーナーとして接するアスリートには、皆、強い欲求があります。国体やパラリンピックに出場するアスリートに至っては、尚更ですので、その心意気には感嘆ばかりです。(もちろん、モチベーションだけでなく、身体そのものが異なるため、提供する内容は異なりますが、詳細は割愛します)

 

― トレーナー活動でしか味わえないだろう魅力があれば、教えて下さい。

:試合前の独特の緊張感ですかね。

障がい者水泳のアスリートは、パラリンピックやパンパシフィック水泳といった国際大会で結果を残すために、日々練習を行っています。だから、アスリートにとって、試合は日々の集大成になりますので、試合前のコンディショニングには、独特の緊張感が流れるんです。その中で、トレーナーは、数時間後・数分後にコンマ1秒でもタイムを縮められるよう最善を尽くしますので、良い結果が伴った時の喜びは格別ですね。

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国際大会の試合前、コンディショニングを行う島PT

 

― アスリートから信頼されるトレーナーになるには、どのような意気込みが必要でしょうか?

:試合のみでなく、可能な限り練習にも参加することです。

PTの資格を持っていて、トレーナーに興味がある方は一定数いらっしゃるかと思いますが、トレーナーは生半可な気持ちで務まるものではありません。普段は病院・施設等で勤務しているからといって、試合にのみ参加していても信用は得られません。日々の練習からアスリートと接し、身体の状態を把握することが、信頼関係の構築に繋がると思います。

仮に何らかの制約で、練習に参加出来ないならば、アスリートの活動(練習)報告書を定期的に確認し、状態を把握することだってできます。アスリートは、可能な限りの時間を費やし、競技に打ち込んでいますので、トレーナーもそれ相応の意識を持たなくてはいけません。また、アスリートの身体に触れるのみでなく、動作観察もしっかりと行い、何かしらの要望があった時に、迅速に対応できるよう準備することも必要ですね。

 

 

人の何倍も努力しなくては生き残れない

― PTとして勤務しつつ、トレーナー活動にも時間を割くことは大変かと思います。普段、どのような意識でPTの仕事に取り組んでいるのでしょうか?

:勤務先の業務を、誰よりも率先して行うことですね。

トレーナー活動に参加していると、国内合宿ならば2~3日、海外遠征では10日間程度の休暇が必要になります。それらに参加するためには、まずは職場の方々から認められる存在にならなければいけません。むろん、普段の業務を怠っているようでは話になりません。堂々とトレーナー活動ができるよう、遠征に参加するならば一早く休暇申請を行い、周りに迷惑をかけぬよう、業務を終わらせておく、又は引き継ぎを行っておくことは必要でしょう。私も遠征直前には、夜遅くまで残業することが多々ありました。

 

― 現在、PTの数が急激に増加していますが、今後、若手のPT(PTの学生含む)が、生き残るには、何が必要でしょうか?

:PTは尊い仕事です。PTとして尊くあり続ける(生き残る)には、人の何倍もの努力が必要になるでしょう。

現在、PTの収入は、医療・介護保険に依存しており、その財源が圧迫され続けていますので、収入は減少傾向にあります。私は、PTは尊い仕事だと考えておりますし、決して安月給で働くような仕事にしたくありません。だからこそ、医療・介護保険の範囲外(自費)の分野でも活躍できるようになることは必要でしょうし、そうなって欲しいと考えています。

 

PTが増え続け、財源が圧縮されている現実を受け止め、その状況下で生き残るには、人の何倍も努力しなくてはいけないことをわかって貰いたいんです。私は、普段は、理学療法学科の教員として働いていますので、そういったことを学生には伝えていきたいですね。そういった立場も踏まえ、勘違いして貰いたくないのは、PTは実力がある(治すことができる)からこそ尊い仕事なのであって、単にPTの資格をもつことが尊いことではないのです。

 

― 若手のPTは具体的にどういったアクションを起こせばよいのでしょうか?

:どんどん外に出ていくことだと思います。

例えば、講習会や、トレーナー活動に参加すること一案です。少なくとも、私が若手の頃は、興味がある分野、特にスポーツ分野の勉強会には、必ず参加していました。私は新卒で入職した職場が障がい者センターでしたので、脳卒中や脳性麻痺等の疾患に関する勉強会には頻繁に参加したものです。おそらく、私と同世代のPTは、皆そうやって学び、知識と技術を高めてきたかと思いますので、職場の中だけで勉強する機会を求めている若手をみると、臆しているように感じてしまうのではないでしょうか。

自分で行動を起こして、興味があることには、どんどん飛びこんで欲しいですね。

 

 

世界で通用する理学療法士の育成

― 2016年のブラジルパラリンピックが迫ってきましたが、そちらへも帯同される予定でしょうか?

:2012年のロンドンパラリンピックで、最後の帯同にしようと決めていました。

しかし、幸いなことに、携わってきたアスリートたちから「島先生もきてくれ!」との声があがっていますので、少し前向きに検討したいです。

 

ただ、2020年の東京パラリンピックについては、観客席から応援に回りたいですね。

2015年4月からは理学療法学科の教員として、勤務しているのですが、そこでの目標が2020年の東京オリンピック・パラリンピックに帯同できるレベルの人材(PT・AT)を育成することです。日の丸を背負って、アスリートを本気でサポートしたいと考える若い人材を、世界で通用するレベルにまで育成したいと考えています。自分を信頼してついて来てくれるような若手には、自分が10年かけて身に付けた知識や技術を、5年以下で習得させてあげられる自信があります。

 

― 最後に、島先生を虜にしたパラリンピックの魅力を教えて下さい。

:世界一を争うレースに自分が関わっているという興奮です。

パラリンピックの会場に行けば、その興奮で身震いしますし、結果が出たときの達成感は何事にも代えがたいです。今後、若手にもそういった感動を味わって頂けるよう、育成に全力を注いでいきたいと思います。


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島 樹(理学療法士、日本体育協会公認アスレティックトレーナー)
一般社団法人 日本身体障がい者水泳連盟(JPSF) 技術委員
学校法人履正社 履正社医療スポーツ専門学校 講師

 

 

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