やる気理論を臨床に活かす:「まとめ」編

こんにちは!理学療法士、喜多一馬です。
いよいよ「やる気理論」シリーズのまとめです。 

これまで、「自己効力感」、「内発的動機付け」(Part1Part2)、「期待価値理論」「学習性無力感」「フロー理論」など、
「やる気理論」で有名なものを、ピックアップしてお伝えしてきました。 

今回は、最終回として多くの理論を紹介した理由について触れながら、まとめていこうと思います。          

 

 

パーフェクト理論が存在しない!   

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やる気理論には、多くの種類があります。 何故そんなにたくさんの理論が存在しているのでしょうか?
実は、どんな状態でも解説出来る「パーフェクト理論」が存在しないからです! 
例えば、、、
「自己効力感」の視点から考えると「内発的動機付け」の部分が説明出来ない・・・。
「内発的動機付け」と「フロー理論」って似ているけど、ちょっと視点が違う・・・。

というように、有名なやる気理論であっても、多くの語り切れない視点があります。
そのため、1つの理論だけで、人のやる気を解説することは難しいのです。  

また、いくつかの理論で似ている部分がある理由は、ある理論から発想を得て、別の理論が派生して生まれているためです。 人のやる気を知るって、とっても難しい事なんです。  

 

 

多角的な視点から考察しなければならない  

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パーフェクト理論が存在しないため、私たち療法士は、患者様へのアプローチ方法を多角的に評価していく必要があります。 
例えば、痛みがある患者様を診る際には、
・筋肉痛かな?
・もしかして骨折?
・いやいや心因性かも?
・ただの擦り傷かも?
このように様々な仮説を立て、検証していく必要があります。 

人のやる気も、様々な視点から考察することが必要です。
・課題難易度が高いのかな? 
・楽しいと思ってないのかな? 
・頑張っても仕方がないと思っているのかな?
・ 失敗経験ばかりさせてないかな?
こんな風に様々な仮説を立てていきます。 
痛みの評価には様々な知識や技術が必要なように、やる気の評価にも様々な知識や技術が必要になってきます。  

 

 

最後に   

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私は PT2 年目の頃、ひょんなことから、やる気理論の勉強を始めました。
「こんなの臨床で意味あるのかな~?」 と最初は思っていたのですが、勉強が進むにつれて、患者様への対応が出来るようになっ ていきます。 
患者様のやる気を高める方法を知っていると、自分が介入する時だけでなく、困っている同僚の手助けにもなります。 
また、どうしてもやる気を高めてあげることが出来ない患者様も、その理由がはっきりとすることで、良い意味で気が楽になり、他の視点からアプローチすることが出来ます。  
リハビリテーションに関わる者にとって、「患者様のやる気」は奥の深いとっても大切なものだと思います。 
私もまだまだ勉強中ですが、さらにレベルアップして、やる気を引き出せる療法士になっていきます。 
皆様も、やる気を高めることが出来る療法士になって下さい!




やる気理論を臨床に活かす:「フロー理論」編

こんにちは!理学療法士、喜多一馬です。

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そろそろ「やる気理論」シリーズも終盤となってまいりました…。
これまで多くの理論を紹介してきましたが、実際に臨床で活用されていますか?
少しでも臨床に役立っていれば、幸いです。
まだ活用出来ていない方は「そういえば、あんな理論があったな~!」と、ぜひ思い出し てみて下さい!

さて、今回は「フロー理論」を紹介します!

 

「フロー理論」って何?

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フロー理論とは、簡単に言うと、「楽しくて仕方なく、燃えている状態」のことです。
私達は何か課題取り組んでいる時、疲れ・空腹・時間、時には、自分の存在すらも忘れてしまって、
目の前の課題にただただ没頭してしまうこと がありますよね?
皆様も、部活にのめり込んでいるとき、
「楽しくて、燃えていて、目の前のボール以外何も見えない!」なんて経験があると思い ます。
スポーツ・芸術・子ども教育等の場面でもよく聞く理論ですので、皆さんも聞いたことが あるかもしれませんね。
(「ゾーンに入る」なんて言葉も一種のフロー現象とされています)

 

 

フロー理論をどう臨床に活かすのか?

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先に述べたことから、フロー理論を直接、臨床に活かすことは難しいです。
しかし、フロー理論の『考え方』を臨床に活かすことは出来ます!

それでは一緒に考えていきましょう!

フローな状態を体験するためには、
 課題が挑戦的な難易度であること
 課題がクリア出来ているか明確であること この 2 点が条件であるとされています。

 では課題難易度設定が重要となります。
難しすぎれば、課題がクリア出来ず、不安や恐怖に陥り、簡単過ぎると、課題が退屈に感 じたり、無関心になります。
例えば、歩行器歩行監視レベルの患者様の場合、

 ・平行棒内歩行…「こんなのもう出来るしなぁ、退屈!」
・杖歩行…「適度な挑戦だ!おもしろい!」
 ・独歩…「難しすぎる…。怖い、出来ない」 なんて状況になるかもしれません。

もちろん、患者様の性格・病状の認識・訓練経過など、 多くの要因によって決まりますので、一概に杖歩行が適切とは言えません。
患者様によっては独歩すら、全然上手く出来ないのに「簡単すぎる、面白くない!」という方もいるのが事実です。
私が知っている患者様では、杖歩行自立レベルですが、ジャンプの練習が挑戦的で面白い 課題だったという方がいました。

 では患者様へのフィードバックが重要となります。 スポーツ分野で、フロー状態が得られやすいのには理由があります。
それは結果が明確で、すぐに認識出来るためです。 野球でストライクを取る、テニスでラリーが続く、バレーボールでアタックに成功するな ど、
スポーツでは「どうなれば良いのか」(目標)が明確であり、それが自分自身 によって即座に判断することが出来るのです。

臨床場面では、患者様自身が課題をこのように捉えることは簡単ではありません。
「自分の体がどうなっているのか分からない…。」
「反復練習で良くなっているか分からない…。」
「出来たと感じても、セラピストが声を掛けてくれない…。」 このような問題が、患者様の目の前にはあります。

そこで、療法士は
・目標を事前に、しっかりと伝える
・実際に生じた結果、目標の差を伝える
・上手く出来た時には、しっかりと即座に伝える このような点に気を付けながら、患者様と関わることが望ましいと考えられます。

 

 

おわりに

いかがでしたか?
これまでの記事を読んだ方なら、「なんかこの話…前の記事に似てない?」なんてことに気 付いた方もいらっしゃるかもしれませんね。
次回は「やる気理論」最終回として、 これまでのまとめと、何故似たような理論を紹介したのか、について触れてみようと思い ます。




やる気理論を臨床に活かす:「学習性無力感」編

理学療法士の喜多一馬です。

2016年、皆様は良いスタートを切れたでしょうか?
今年もcareer PTで様々な知識をつけていきましょうね!

 

学習性無力感とは?

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 「学習性無力感」とは、「逃れられない不快な刺激」を受け続けると、自分ではどうすることも出来ないと思うようになり、その結果、無気力になるという理論です。

 

 

「学習性無力感」に関する実験

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セリグマンという心理学者が、犬を用いた有名な研究を行っています。

 音が鳴ると、犬に電気刺激が与えられます。
そこで、犬は「音と電気刺激」が関連している事を学習し、音が鳴った瞬間、電気刺激の流れない部屋に逃げるようになります。
しかし、電気刺激のない部屋へ逃げられないように、セリグマンは柵を作ってしまうのです。
悪い人ですね。

最初、犬は一生懸命逃げようとするのですが、柵があるので、もちろん逃げられません。
犬は次第に逃げられないことを悟り、とうとう逃げようとすらしなくなってしまうのです。
これが最初確認された「学習性無力感」です。
犬がとっても可哀想ですね。
人間においても、犬と同様に「学習性無力感」に陥ってしまうことが報告されています。

 

 

臨床で生かすために

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 学習性無力感は、「人のやる気が低下していく」ことを述べた理論です。
臨床においては、患者様のやる気が低下しないように、我々療法士がどのように関わるべきかを教えてくれます。

【課題設定】
・「どれだけ練習しても上手く出来ない…。」
このように、患者様のやる気が低下しないように、難しすぎる治療課題を設定しないようにしましょう。
そして、出来たことはしっかり伝えるようにしましょう!

【声掛け】
・上手く出来ていないことばかりに注目した声掛けを行っていませんか?
患者様は療法士からの声掛けを重要と感じています。
何気ない一言が、療法士が思う以上のダメージを与えているかもしれません。

 【出来なかった原因を伝えているか】
課題遂行出来なかった原因は何だったのか、これを明確にすることが重要です。
「今はまだ、歩行練習は早すぎた」、「偶然、天気が悪くて不調だった」
「人が多すぎて、リハビリに集中できなかった」など、出来なかった原因は様々あります。
患者様に、「乗り越えることが出来る!」、そんな認識を持たせることによって、学習性無力感に陥りにくいと考えられます。

我々療法士の何気ない一言によって、患者様は学習性無力感に陥っているかもしれません。
患者様のやる気を引き出す、そんな療法士になりましょう!




やる気理論を臨床に活かす:「期待価値理論」編

理学療法士の喜多一馬です。
今回は「期待価値理論」を紹介します。

 

期待価値理論

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ある行動に対するやる気は、

『期待』‐目標達成の可能性
『価値』‐目標の魅力

この2つの兼ね合いによって決定するというものです。

『期待』とは…
「テストで合格する可能性は…五分五分だ!」
こんな具合に、自分で達成可能性を想定することです。

『価値』とは…
「テストで合格したら…理学療法士になれる!」
行動が成功することで、何が得られるかです。

『期待』が高くても、『価値』が無ければ、やる気は湧きません。
「絶対出来るけど、やっても意味ないし!」なんて気持ちの状態ですね。

また、『価値』が高くても、『期待』が無ければ、やる気は湧きません。
「出来たら良い事あるけど、絶対出来ないから!」なんて気持ちの状態ですね。

人のやる気には、『期待』『価値』どちらもバランスよく整うことが大切なのです。

 

 

臨床における『期待』

期待価値論_01

臨床において、患者様の期待が低い時はこんな気持ちです。

「この自主トレメニュー、難しそうだけど出来るかな」
「調理練習なんて初めて。片手で野菜を切れるかなぁ…」
このような場合、私達療法士がしっかりと声掛けをしましょう。

「今までの練習より簡単です、一人でも心配ないですよ!」
「片手で料理出来た患者様をたくさん見てきました、絶対大丈夫です!」
以前紹介した、自己効力感の高め方に似たような関わりをしてください。

自信が湧いてくれば、自ずと達成可能だと思えて、『期待』は高まります。

 

 

臨床における『価値』

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実は、私達療法士は、『価値』について忘れがちです。

「この動作なら…ここが弱いはずだ!」
評価結果から、すぐに治療に移ってしまうこと、ないでしょうか?

「筋力ないから、歩けないのは当たり前でしょ~」
療法士にとっての当たり前を、患者様にとっても当たり前、にしてないでしょうか?

もし忘れてしまっている時には、一言心掛けてみてください。
「この筋トレをすれば、歩けるようになりますよ」
「歩行練習を頑張れば、家に帰れますよ」
このように、患者様が取り組むことでどんな姿になるか、しっかり伝えましょう。

「これを頑張ったら、こうなるんだ!」と患者様が、各メニューについて説明出来るくらいならば最高ですね!

 

実践でのワンポイント

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『期待』は高ければ高いほど良いわけではありません。

「出来なさそうだけど、ちょっと頑張れば出来る!」
成功確率が70%~80%程度の難易度が一般的には望ましいと言われています。

しかし、これも人によりけりなんです。
人によっては「成功確率100%!」と思える課題でないと取り組めなかったりします。

また、何でも乗り越えられる人には、あえて成功確率10%くらいの課題を設定します。
「全然上手く出来ない!悔しい!」と、心に火を付けることでやる気を加速させることもあります。

一方、『価値』は高いほど有効です。
ポイントは、説明の方法です。
どれだけ説明しても、患者様が「価値がある!」と感じなければ、意味ありません。
また、価値があることを伝えようとするあまり、だらだらと喋ってしまい、面倒くさい療法士だと思われてもいけません。

ベテラン療法士は、患者様に少し触れただけで
「この先生…すごく上手!」と思わせることが出来ます。
(そんな療法士に早くなりたいですね!)

口ではなく、手で、
『この先生の治療なら、確実に良くなる!(=すごい価値!)』と、価値を感じてもらうのも一つの手段です。

 

 

「な~んだ、普通のことだな!」と思われる方も、
是非「期待価値理論」を知って、基本に立ち返ってくださいね!

 




やる気理論を臨床に活かす:「内発的動機付け」続編(Part2)

こんにちは、理学療法士の喜多一馬です。それでは早速、前回(Part1)の続きをどうぞ!

 

内発的動機付けって何だっけ?(復習)

内発的動機付け_01

「おもしろい!」「楽しい!」のような「活動自体から得られる満足感」を求めるような動機付けを『内発的動機付け』と呼びます。

内発的動機付けで行動している時、人はやる気満々で、どんどん頑張っていくような状態であると言えます。しかし、患者様において内発的動機付けで行動することはほとんどありません。(リハビリしてて、楽しい~!って何か変ですもんね)そのため、内発的動機付けにより近い感覚になれるように促すことで、患者様のやる気を高めることが出来ます。

 

「リハビリしないと、セラピストに怒られるから」 と思いながら練習に取り組むより、
「リハビリして、体が良くなるのが嬉しいから」 と思う方が、絶対に良いですよね。

 

これが内発的動機付けに近い状態、と考えることが出来ます。これには、次の3つの要素が必要とされています。

1.自律性
2.有能感
3.関係性

 

それではこの3つが何なのか、そして、患者さんに対してどう実践するのかを考えていきましょう。

 

自律性

内発的動機付け2_02

療法士がよく用いる「自立」とは違い、『自律』です。

これは「やらされるのではなく、自分から進んで取り組む」ことを意味します。

 

「リハビリの先生がしなさいと言うので、取り組んでいます」
「この練習は自分が必要だと感じているので、取り組んでいます」

 

この2つでは、やる気の程度が違うと思いませんか?これが自律性の違いです。自律性を促すためには、患者様自身に様々な選択をさせ、自己決定させることが必要です。例えば、

 

「今日はどのベッドで練習しますか?」
「歩行練習か筋トレか、どちらを先にしますか?」
「リハビリの時間は何時頃がいいですか?」
「次は何に気を付けながら、歩く練習をしますか?」
「今日は筋トレ、何回頑張りますか?」

 

こんなことで良いの?と思うかもしれませんが、患者様に小さなことからでも、「選択」と「決定」をさせるようにしましょう。もちろん、療法士がさせたいことを選ぶように、巧妙に問いかけることも必要です。

 

「筋トレは10回くらいが効果的と言われています。何回頑張れそうですか?」
「私は膝に注意しながら歩くことが必要と感じています、何に気を付けて歩きますか?」

 

ほとんど誘導しているようですが、「選択」と「決定」を下しているのは患者様です。これがすごく大切です。

 

 

有能感

内発的動機付け2_03

 「劣等感」という言葉は聞いたことがあると思います。

自分が人より劣っている・・・と思っていると、様々な事に対して自信が持てなくなって、やる気がなくなってしまいます。

 

「有能感」は、この逆をイメージしていただけると、分かりやすいです。

「自分には色々なことがやり遂げれるんだ…!」と、感じることです。こうなると自信が湧き、やる気が高まっていきます。患者様を褒めることは重要とは、よく聞くと思いますが、これが有能感にマッチします。臨床場面では、次のような例が挙げられます。

 

「先週よりも、筋力がついてきましたね!」
「多くの患者さんを担当してきましたが、良くなるのが早いですね!」
「ケガからは想像出来ない回復の具合ですよ!」

こんな声掛けを行うことで、

『努力することで、ちゃんと出来る!』と思って貰うことが出来ます。もちろん努力について触れることで、効果は更にアップします。

 

「ここ数週の頑張りはいいですね!おかげで先週より筋力がついてきましたね!」
「○○さんはよく頑張ってるから、他の患者さんよりも治りが早いんです!」
これによって『努力が大切なんだ!』と感じて貰え、よりリハビリへのやる気が高まります。

 

 

関係性

内発的動機付け2_04

誰かと結びつきたい、誰かから認められたいという欲求が人にはあります。この欲求を満たすことで、内発的動機付けはより高まっていきます。

患者様の関係性欲求を満たすためには、これまでの記事で触れてきたようなコミュニケーション技術を用いることが有効です。さらにもう一工夫として、

 

「○○さんが治っていくと、私も嬉しいんです!」

 

こんな一言を沿えるようにしましょう。

 

「この療法士のために頑張りたい!」

 

こう思ってもらえるほど、関係性欲求が高まっている状況はありません。徹底的に患者様に寄り添いましょう!

 

 

いかがだったでしょうか?

簡単で誰でも使える技術で、患者様のやる気は高めることが出来ます。知っているだけで療法士としてのレベルアップは間違いなしですよ!

 




やる気理論を臨床に活かす:「内発的動機付け」編(Part1)

こんにちは、理学療法士の喜多一馬です。
今回は、前回にご紹介しました自己効力感と同じくらい、ポピュラーなやる気理論である「内発的動機付け」についてご紹介します。

 

外発的動機付けとは

内発的動機付_01

まず、「”内”発的動機付け」と対にある「外発的動機付け」についてご紹介します。その昔、人のやる気は「お金」「食べ物」「名誉」のような「外的な報酬」によって生じると考えられていました。

「給料を沢山貰うために頑張るぞ!」
「おいしい物食べるために頑張るぞ!」
「偉くなりたいんだ!頑張るぞ!」

他にも、こんなものも含まれます。

「怒られたくないから、やるしかないなぁ…」
「試験に受かるように、頑張ろう!」

世間で「アメとムチ」という言葉があるように、アメを得るため、又はムチを避けるために頑張ることが外発的動機付けということです。

 

 

内発的動機付けとは

しかし、人のやる気は外発的動機付けだけでは説明出来ないことが明らかにされました。とある有名な実験があります。ソマ・パズルというゲームを3日間行わせ、その取り組み時間を比較したものです。

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1日目
A・Bグループどちらに対しても、賞金はありません。

2日目
Aグループには、パズルが上手くできれば、小額の賞金を与えました。
Bグループには、賞金はありません。

3日目
Aグループには、賞金が無いことを伝えました。
Bグループには、変わらずパズルに取り組んで貰いました。

 

その結果、3日目のパズルへの取り組み時間はどうなったでしょうか・・・?そうです、皆様が予想される通りです。

 

Aグループの取り組み時間は、3日目が一番短くなりました。
Bグループの取り組み時間は、3日目が一番長くなりました。

 

ソマ・パズルは、本来面白いパズルゲーム(らしい)です。Aグループではパズルの面白さよりも、賞金に気持ちが向かってしまったため、賞金がないと分かった途端にやる気を失ってしまったのでしょう。一方、Bグループではやればやるほどパズルの面白さにハマってしまったのでしょう。

このように、人のやる気は外的な報酬だけでなく、「面白い」「楽しい」といった、「その活動自体から得られる、満足感」を求めるようなものがあります。これが内発的動機付けと呼ばれ、強力なやる気の源とされています。

 

 

患者様の動機付けはどうなっているの?

内発的動機付_03
入院している患者様が、面白くもないリハビリメニューを頑張っているのは、

「家に帰りたい!」
「歩けるようになりたい!」
「おいしいご飯が食べたい!」

こんな外的報酬による、強い外発的動機付けが作用していることが殆どです。むしろ内発的動機付けが高く、「リハビリって爽快!」何ていうような方は入院患者様では殆どいらっしゃいません。(たま~に見掛けますが、ちょっと不気味です。)

しかし、「結局、全部外発的動機付けだから、知っていても意味ない!」という訳ではありません。外発的動機付けの中でも、より内発的動機付けに近い状態になることが大切です。

「リハビリしないとセラピストに怒られる」
「リハビリしないと体が良くならない」
「リハビリして早く歩けるようになりたい」
「リハビリして体が良くなるのが嬉しい」

これらは、全て外発的動機付けですが、気持ちの持ち方には大きな差があります。そのため、セラピストは、より内発的動機付けに近い感覚になれるように関わることで、患者様のやる気を促すことが出来ます。

 

 

どうやって患者様のやる気を促すの?(次回予告)

内発的動機付けに近付けるためには、3つのポイントがあります。

1.自律性
2.有能感
3.関係性

この3つを考えながら、ちょっとした関わりが大切です。次回は、実際に患者様に関わる際のポイントを紹介したいと思います。

 




患者様のモチベーションを高める言葉のマジック(Part3:信頼関係の作り方)

こんにちわ、医療系マジシャンの高橋真人です。
Part2の記事「患者様のモチベーションを高める言葉のマジック(Part2:言葉と脳の関係性)」で、以下2点についてご説明させて頂きました。

・セラピストがかける言葉によって、人の身体の反応は変わること。
・セラピストの声かけは大切だが、セラピストと患者様との間に信頼関係が構築されていないと、どんな言葉も相手には響かないこと。

そのため、今回は「セラピストの声が相手の芯まで届く信頼関係の作り方」についてお伝えさせて頂きます。

 

ラポールによる信頼関係の構築

上述のとおり、前回は「そもそもセラピストの言葉は相手との信頼関係が無いと、何も響かない」と説明しました。これは催眠をかけるときも同じで、必ず術者は相手とのラポールを築くようにアプローチします。

“ラポール(ウィキペディアより)
セラピストとクライエントの間に、相互を信頼し合い、安心して自由に振る舞ったり、感情の交流を行える関係が成立している状態”

このラポールが築けないと、絶対に信頼関係は生まれないですし、催眠にはかかりません。そのため、まずは相手に同調することから始めます。相手に合わせ、「自分はあなたの味方です」「あなたを受け入れます」というメッセージを暗に込めていく訳です。

 

 

医療の現場におけるラポール形成

さて、これをセラピストに置き換えると、この同調は問診をやる前から始まっています。私は整形外科クリニックに勤務しているので、患者様を待合室からリハ室へ呼ぶ所から同調は始まります。

問診前

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例えば、名前を呼んでさっさと自分はリハ室へ先へ行ってしまうのか、はたまた、一緒に歩いて笑顔で案内するのか。それだけで相手がこちらに感じる印象は大きく変わり、ラポール形成に影響します。

もっと細かく言えば、手を差し伸べて「こちらのベットにお掛けください。」と丁寧に案内するのか、患者様が勝手に座るのを待つのかでも全く異なります。(※セラピストの指示で患者様に座ってもらった方が主導権を生み易いです。但し、ここでは「同調」の話をしますので、「主導権」については、次回詳しくお伝えします)

 

問診中

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そして問診をスタートさせる時にまず意識しなければならないのが、表情です。最初は基本的に笑顔です。

  • 表情を豊かにして、相手の感情に合わせて下さい。

「ここが辛くて…」
「こんな時はもう我慢できないくらい…」
「夜も寝れなくて…」

と辛い症状を訴えている時は、こちらも辛そうな表情をして、相手の感情に合わせて下さい。そして、相手の感情を拾って下さい。

「それは大変でしたね〜。」
「それはだいぶ痛そうでキツイですよね〜。」
「それだと寝不足で疲れも取れないですよね〜。」

  • 一言でも良いので相手の感情を拾う言葉をかけて下さい。

「はい。夜間痛があるのですね。」と、サラッと流してはダメです。

 

 

自費の世界では当然の接客

ちなみに私は学生の頃に、60分で7000円するような整体院でバイトをしていました。

  • 自費の世界では、ラポールうんぬんではなく、相手の感情を拾うのは当たり前な接客です。

それができないとリピートされないですし、厳しい指導が入ります。PTとなると、勝手に患者さんは来てくれます。指名制度も無いですし、リピートを考える必要もありません。その環境が患者様とのコミュニケーションの大切さを忘れさせる(意識させなくなる)要因になっています。いきなり患者様とタメ口で話すPTもいますが、その辺が原因かと思います。  

 

 

ただの相談役にならないための主導権

催眠でのラポールという観点でも、接客という観点で考えても、相手に同調することはとても重要です。ポイントは「相手の感情を拾う」ことです。そして拾ったら、それに全力で同調して下さい。それが信頼関係を築く第一歩です。次回は、先ほど少し述べました「主導権」についてお伝えします。

  • ハッキリ言って、同調するだけでは 、ただの相談役でしかありません。

そこからセラピストの言葉を信用してもらい相手を良い方向に導くには、相手を自分の世界へ引きずり込み、ペースを握る必要があります。そのためには「主導権」が必要不可欠なのです。そんな主導権の握り方を次回はお伝えしていこうと思います。

 




やる気理論を臨床に活かす:「自己効力感」編

こんにちは、理学療法士の喜多一馬です。
やる気は治療効果を左右する大きな因子です。

「あの人はやる気があって、頑張っているから、良くなったよね。」
「この人はやる気がないし、あんまり変わらないと思う。」

といったような療法士の会話を耳にすることも少なくありませんが、私たち療法士は、そもそも「やる気」に関わる知識をどこまで有しているでしょうか。

今後、「やる気理論を臨床に活かす」と題して、やる気に関わる様々な理論を紹介し、臨床場面での活用方法を考えていきます。 このシリーズを通じて、 「この人には〇〇理論の観点から関わっていこう!」 といったような考え方が出来るようになると、臨床がスムーズに行えるようになるはずです。

それでは早速、最初の理論「自己効力感」をご紹介します。


自己効力感とは

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自己効力感(セルフ・エフィカシー)、この言葉、 聞いたことがある人も多いでしょう。これは、米国スタンフォード大学で心理学教授を務めた、アルバート・バンデューラというカナダ人心理学者が提唱した概念です。自己効力感とは、簡単にいうと「自分が(ある課題を)出来るかどうかの自信」です。

 

「歩行訓練するけど、ちゃんと出来るかな?」
「筋トレするけど、こんな重さの負荷でもこなせるかな?」
「調理訓練するけど、上手に作れるかしら?」
「バランス練習、上手に出来るかな?」

これらのシチュエーションでの「出来るかどうかの自信」が「自己効力感」と呼ばれるものです。自己効力感が高ければ、困難な課題に対して、次のような考え方になります。

  • 努力する
  • 挑戦する
  • 乗り越えられると信じる

 

一方、自己効力感が低ければ、次のような考え方になります。

  • そもそも困難な状況は避ける
  • 失敗を気にして、挑戦出来ない
  • 乗り越えられないと信じてしまう

これらは気持ちや考え方だけの問題に留まらず、実際の行動にも影響するとされています。

 

 

自己効力感の源

やるき理論_02

自己効力感には、その源があります。例えば1回もスノボーをやったことがないのに、

 

「スノボーめちゃ自信ありますよ!」

とはなりませんよね。 自己効力感を高める4つの因子を紹介しましょう。

 

A.成功体験:行動を達成・成功した経験
B.言語的説得:達成・成功の可能性を他者から説得されること
C.代理経験:他者の達成・成功の様子を観察すること
D.生理的喚起:気分の高まり(課題に関与しないもの)

 

スノボ―では、転倒しなくなって(成功体験)、上級者から褒められ(言語的説得)、上級者の滑りを見ることによって(代理経験)、

 

「スノボー、自信あるんですよ、滑れますよ!」

と自己効力感が高まっていくわけですね。

 

 

自己効力感の高低が、患者様の行動へ及ぼす影響

やるき理論_03

自己効力感の高低を、患者様の行動へ当てはめてみましょう。 自己効力感が高ければ、次のような望ましい効果が想定されます。

  • 難しい訓練メニューも挑戦してくれる
  • 療法士のアドバイスを有効活用してくれる
  • 治療へ積極的に参加してくれる

 

一方、自己効力感が低ければ、こうなります。

  • 厳しい訓練には取り組まない
  • そもそも治療に参加してくれない(嫌々来てくれる)
  • 療法士のアドバイスもあまり聞かない

療法士の介入を阻害するような効果が考えられますね。 また、訓練への取り組み方だけではなく、実際の機能や動作へも影響することがあります。 

  • 独歩に対する自己効力感が低く、歩行器を手放せずに自立出来ない
  • バランス制御への自己効力感が低く、柔軟なバランス反応が取れない

などといったように、自己効力感が影響して、機能や動作が上手くいかないこともあります。

 

 

患者様の自己効力感をどうやって高めるのか

やるき理論_04

患者様の自己効力感を高めるには、4つの因子を利用しなくていけません。 例を交えて、その方法を考えていきましょう。

A.成功体験に働きかける方法
  • 訓練難易度を操作する
  • 達成や成功をフィードバックする
  • 失敗に着目させない

私たち療法士は、「出来ていないことを良くする」という観点を持ちがちです。 そのため、困難な課題を設定することが多いですが、自己効力感を上げるという目的では、適度に達成出来る課題を設定し、

 

「先生、出来ました!」

と患者様に感じて頂くことが大切です。 そして、

 

「〇〇さん、すごい上手に出来ましたね。次はここに気を付けると、良いですよ!」

というように、良い点に着目して、悪い点は患者様も挑戦したくなるように促すと良いでしょう。

 

 

B.言語的説得に働きかける方法
  • 何故、達成出来るのかを、論理的に説明する
  • ポジティブに考えられるように解釈させる

患者様にとって、療法士が放つ言葉は大きな意味を持ちます。

 

「私の経験では、〇〇さんのように一生懸命努力されている人は歩けるようになります!」
「この病態から考えると、頑張れば必ず良くなります」
「今、上手く出来ないのは、上達の過程で必ず必要なものです、むしろ良い傾向です!」

このように、患者様が納得出来るように励まし、説明することで患者様の意欲を向上させることが出来るはずです。

 

 

C.代理経験に働きかける方法
  • 他の患者様の様子を見させる

これは、私が臨床でよく使うテクニックです。病態、症状、年齢、性別等、どこかが似ている患者様で、しかも良い経過の人を指して、

 

「△△さんは、〇〇さんとこんなところが一緒なんですよ。 だから〇〇さんも必ずあんな風に良くなりますよ!」

と伝えます。 患者様は療法士の気付いていないところで、色んな人と自分を比較しています。

 

「あの人はもう歩けるようになってる・・・」
「あの人は私よりも年上なのに・・・」

なんて気持ちになって頂いて、やる気を高めるようにしましょう!

 

 

D.生理的喚起に働きかける方法
  • 体の状態を整える

これは療法士の得意な分野だと思います。 ストレッチ、物理療法、面接などを用いて、心理的にリラックス出来る状態を作り出すだけで、自己効力感は高まりやすいとされています。 これは即時的なものなので、そこから更に、A~Cでご紹介したような手法を用いて、患者様の自己効力感を高めることが有効です。

私たちも体が疲れている時には何を言われても入らなくなってしまいますし、元気な時には人の話を興味を持って聞けるものですよね。


「この患者様の自己効力感ってどんな状態かな?」

なんて考えながら臨床に向かうと、少し変化があるかもしれません。 明日から臨床で活用してみて下さいね!

 

 




患者様のモチベーションを高める言葉のマジック(Part2:言葉と脳の関係性)

こんにちわ、医療系マジシャンの高橋真人です。
前回の「患者様のモチベーションを高める言葉のマジック(Part1:言葉のマジックとは)」に続き、Part2では「言葉と脳の関係性」をお伝えします。

 

知っておいて頂きたいこと

まず、前提として知っておいて頂きたいことがあります。

 

  • セラピストがかける言葉によって、人の身体の反応は変わる

 

ということです。どういうことかと言うと、セラピストの声掛け次第で、痛みや痺れ、動作の改善具合が変わるということです。それだけ、患者さんに伝える言葉が大切だということを認識して頂きたいです。

 

 

脳科学的でいう「痛み」

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そもそも痛みというのは、言ってしまえば「身体の電気信号で、脳が感じている刺激」です。

脳科学的に言うと、「痛み」という信号には、痛みを覚えることによって、危険物を回避するようにする、怪我をした部分を使わないようにする、といったような役割があります。となると、セラピストが頻繁に遭遇する「慢性的な痛み」は脳科学的には、必要ない信号ということになります。これは脳の神経回路の問題とも言われてます。

 

「治っているはずなのにいつまでも痛む・・・。」

 

これは、運動学、解剖学的な要素ももちろんありますが、心理的な要素も含まれてくる訳です。

 

 

言葉と脳の密接な関係

word

さて、「痛みが脳によって感じられている」となると、脳へどれだけの影響を及ぼせるかが大切になってきます。その影響を及ぼす要素の一つとして、「言葉」があります。

 

  • 暗示や催眠が良い例です。

 

実際に、医療の現場でも、麻酔だと身体がアレルギー反応を起こし、ショック死する可能性がある患者様に外科的手術をする際に、催眠を使ったケースもあるようです。これは催眠により痛覚をなくし、そのまま手術をするというものです。

信じられないですが、言葉はそれくらい脳に深く作用することが可能なのです。これで、声かけがどれだけ重要かをご理解頂けたかと思います。

 

 

ちょっと待った!言葉をかけるその前に

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声かけはとても大事です。しかし、セラピストと患者様との間に信頼関係が構築されていないと、どんな言葉も相手には響きません。暗示や催眠も術者との信頼関係で成り立ってます。言ってしまえば、

 

  • 催眠を信じてない人に、催眠は効かないのです。

 

そのため、声掛けによって、相手の身体へ深く作用させるには、前提として「信頼関係」が必要になります。次回は、セラピストの声が相手の芯まで届く、信頼関係の作り方をお伝えようと思います。

 




患者様のモチベーションを高める言葉のマジック(Part1:言葉のマジックとは)

初めまして、医療系マジシャンの高橋真人です。 僕は整形外科クリニックで勤める傍ら、マジシャンとして活動もしております。 そんなセラピスト✖マジシャンの視点から僕が医療の現場で使っている『言葉のマジック』についてお伝えしようと思います。

 

言葉が脳に及ぼす影響

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(http://www.freepik.com/free-photos-vectors/iconより画像を使用)

 

さて、皆さんにまずお聞きします。  

  • 言葉が脳に及ぼす影響がどれだけかをご存知でしょうか?

 

結論から言いますと、もの凄く影響があり、(言葉は)脳の反応を簡単に変えてしまいます。
脳の反応が変わるということは、脳内で分泌されるホルモンが変わることです。
分泌されるホルモンが変わると、身体の反応も変わります。

 

マジシャンは心理的なテクニックや言葉のテクニックを沢山利用します。 そうして相手の脳へ錯覚を起こさせ、相手の反応を引き出す訳です。   これは患者さんとのコミュニケーションにも全く同じことが使えます。  

  • 相手の気持ちを前向きにさせるよう、コントロールできたらどうでしょう?
  • 施術効果を持続させるよう、潜在意識へ刷り込むことができたらどうでしょう?
  • 自主トレを積極的にやってくれるよう、仕向けることができたらどうでしょう?

 

 

『言葉のマジック』の無限の可能性

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最近、身体へ触れずにアプローチする『エネルギーを使った施術』のようなセミナーが増えてきていますよね?  

  • あれは怪しいと思いますか?
  • 胡散臭いと思いますか?

 

言葉のマジックを使えば、同じようなことができます。
マジシャンの視点から見れば、エネルギーを使った施術は『空間の支配』『潜在意識への刷り込み』です。   何だか難しく聞こえますが、簡単なことです。  

  • 知っているか知らないかの差だけです。
  • 誰でもできますし、すぐに使えます。

 

また、『言葉のマジック』は患者さんとのコミュニケーションだけでなく、 上司との関係やプライベートにも活かせます。   これから、そんなテクニックを分かりやすく、順番にお伝えしていきます。

次回の記事では、患者さんのモチベーションを高める言葉のマジックから説明していきます。 これを知っているか知ら無いかだけで、患者さんへのリハビリ効果は激変します。 とても簡単なことなので、是非役立てて頂けると嬉しく思います。