やる気理論を臨床に活かす:「内発的動機付け」続編(Part2)
こんにちは、理学療法士の喜多一馬です。それでは早速、前回(Part1)の続きをどうぞ!
内発的動機付けって何だっけ?(復習)
「おもしろい!」「楽しい!」のような「活動自体から得られる満足感」を求めるような動機付けを『内発的動機付け』と呼びます。
内発的動機付けで行動している時、人はやる気満々で、どんどん頑張っていくような状態であると言えます。しかし、患者様において内発的動機付けで行動することはほとんどありません。(リハビリしてて、楽しい~!って何か変ですもんね)そのため、内発的動機付けにより近い感覚になれるように促すことで、患者様のやる気を高めることが出来ます。
「リハビリしないと、セラピストに怒られるから」 と思いながら練習に取り組むより、
「リハビリして、体が良くなるのが嬉しいから」 と思う方が、絶対に良いですよね。
これが内発的動機付けに近い状態、と考えることが出来ます。これには、次の3つの要素が必要とされています。
1.自律性
2.有能感
3.関係性
それではこの3つが何なのか、そして、患者さんに対してどう実践するのかを考えていきましょう。
自律性
療法士がよく用いる「自立」とは違い、『自律』です。
これは「やらされるのではなく、自分から進んで取り組む」ことを意味します。
「リハビリの先生がしなさいと言うので、取り組んでいます」
「この練習は自分が必要だと感じているので、取り組んでいます」
この2つでは、やる気の程度が違うと思いませんか?これが自律性の違いです。自律性を促すためには、患者様自身に様々な選択をさせ、自己決定させることが必要です。例えば、
「今日はどのベッドで練習しますか?」
「歩行練習か筋トレか、どちらを先にしますか?」
「リハビリの時間は何時頃がいいですか?」
「次は何に気を付けながら、歩く練習をしますか?」
「今日は筋トレ、何回頑張りますか?」
こんなことで良いの?と思うかもしれませんが、患者様に小さなことからでも、「選択」と「決定」をさせるようにしましょう。もちろん、療法士がさせたいことを選ぶように、巧妙に問いかけることも必要です。
「筋トレは10回くらいが効果的と言われています。何回頑張れそうですか?」
「私は膝に注意しながら歩くことが必要と感じています、何に気を付けて歩きますか?」
ほとんど誘導しているようですが、「選択」と「決定」を下しているのは患者様です。これがすごく大切です。
有能感
「劣等感」という言葉は聞いたことがあると思います。
自分が人より劣っている・・・と思っていると、様々な事に対して自信が持てなくなって、やる気がなくなってしまいます。
「有能感」は、この逆をイメージしていただけると、分かりやすいです。
「自分には色々なことがやり遂げれるんだ…!」と、感じることです。こうなると自信が湧き、やる気が高まっていきます。患者様を褒めることは重要とは、よく聞くと思いますが、これが有能感にマッチします。臨床場面では、次のような例が挙げられます。
「先週よりも、筋力がついてきましたね!」
「多くの患者さんを担当してきましたが、良くなるのが早いですね!」
「ケガからは想像出来ない回復の具合ですよ!」
こんな声掛けを行うことで、
『努力することで、ちゃんと出来る!』と思って貰うことが出来ます。もちろん努力について触れることで、効果は更にアップします。
「ここ数週の頑張りはいいですね!おかげで先週より筋力がついてきましたね!」
「○○さんはよく頑張ってるから、他の患者さんよりも治りが早いんです!」
これによって『努力が大切なんだ!』と感じて貰え、よりリハビリへのやる気が高まります。
関係性
誰かと結びつきたい、誰かから認められたいという欲求が人にはあります。この欲求を満たすことで、内発的動機付けはより高まっていきます。
患者様の関係性欲求を満たすためには、これまでの記事で触れてきたようなコミュニケーション技術を用いることが有効です。さらにもう一工夫として、
「○○さんが治っていくと、私も嬉しいんです!」
こんな一言を沿えるようにしましょう。
「この療法士のために頑張りたい!」
こう思ってもらえるほど、関係性欲求が高まっている状況はありません。徹底的に患者様に寄り添いましょう!
いかがだったでしょうか?
簡単で誰でも使える技術で、患者様のやる気は高めることが出来ます。知っているだけで療法士としてのレベルアップは間違いなしですよ!