やる気理論を臨床に活かす:「フロー理論」編
こんにちは!理学療法士、喜多一馬です。
そろそろ「やる気理論」シリーズも終盤となってまいりました…。
これまで多くの理論を紹介してきましたが、実際に臨床で活用されていますか?
少しでも臨床に役立っていれば、幸いです。
まだ活用出来ていない方は「そういえば、あんな理論があったな~!」と、ぜひ思い出し てみて下さい!
さて、今回は「フロー理論」を紹介します!
「フロー理論」って何?
フロー理論とは、簡単に言うと、「楽しくて仕方なく、燃えている状態」のことです。
私達は何か課題取り組んでいる時、疲れ・空腹・時間、時には、自分の存在すらも忘れてしまって、
目の前の課題にただただ没頭してしまうこと がありますよね?
皆様も、部活にのめり込んでいるとき、
「楽しくて、燃えていて、目の前のボール以外何も見えない!」なんて経験があると思い ます。
スポーツ・芸術・子ども教育等の場面でもよく聞く理論ですので、皆さんも聞いたことが あるかもしれませんね。
(「ゾーンに入る」なんて言葉も一種のフロー現象とされています)
フロー理論をどう臨床に活かすのか?
先に述べたことから、フロー理論を直接、臨床に活かすことは難しいです。
しかし、フロー理論の『考え方』を臨床に活かすことは出来ます!
それでは一緒に考えていきましょう!
フローな状態を体験するためには、
①課題が挑戦的な難易度であること
②課題がクリア出来ているか明確であること この 2 点が条件であるとされています。
①では課題難易度設定が重要となります。
難しすぎれば、課題がクリア出来ず、不安や恐怖に陥り、簡単過ぎると、課題が退屈に感 じたり、無関心になります。
例えば、歩行器歩行監視レベルの患者様の場合、
・平行棒内歩行…「こんなのもう出来るしなぁ、退屈!」
・杖歩行…「適度な挑戦だ!おもしろい!」
・独歩…「難しすぎる…。怖い、出来ない」 なんて状況になるかもしれません。
もちろん、患者様の性格・病状の認識・訓練経過など、 多くの要因によって決まりますので、一概に杖歩行が適切とは言えません。
患者様によっては独歩すら、全然上手く出来ないのに「簡単すぎる、面白くない!」という方もいるのが事実です。
私が知っている患者様では、杖歩行自立レベルですが、ジャンプの練習が挑戦的で面白い 課題だったという方がいました。
②では患者様へのフィードバックが重要となります。 スポーツ分野で、フロー状態が得られやすいのには理由があります。
それは結果が明確で、すぐに認識出来るためです。 野球でストライクを取る、テニスでラリーが続く、バレーボールでアタックに成功するな ど、
スポーツでは「どうなれば良いのか」(目標)が明確であり、それが自分自身 によって即座に判断することが出来るのです。
臨床場面では、患者様自身が課題をこのように捉えることは簡単ではありません。
「自分の体がどうなっているのか分からない…。」
「反復練習で良くなっているか分からない…。」
「出来たと感じても、セラピストが声を掛けてくれない…。」 このような問題が、患者様の目の前にはあります。
そこで、療法士は
・目標を事前に、しっかりと伝える
・実際に生じた結果、目標の差を伝える
・上手く出来た時には、しっかりと即座に伝える このような点に気を付けながら、患者様と関わることが望ましいと考えられます。
おわりに
いかがでしたか?
これまでの記事を読んだ方なら、「なんかこの話…前の記事に似てない?」なんてことに気 付いた方もいらっしゃるかもしれませんね。
次回は「やる気理論」最終回として、 これまでのまとめと、何故似たような理論を紹介したのか、について触れてみようと思い ます。