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合同会社Laugh(リハガク)の澤田代表(右)と久貝副代表(左)。
大阪、兵庫、岡山の3拠点で、OTのセミナーを運営する2人は、まだ5年目の療法士。 勤務していた病院を3年目半ばで退職し、リハガクを立ち上げられた2人に、独立エピソードを聞いてみました。


リハガクの原点は「何かやりたい」という素直な気持ち

―― お2人、仲良いですね?

澤田:久貝とは大学の同級生ですので、付き合いは9年目くらいになります。 学生時代にパチンコや麻雀で盛り上がった時、追試を逃れるために必死で勉強した時も一緒にいました。学校の成績も同じ位でしたし、周りの人たちを笑わせることが好きといった点も似ていたので、気が合ったんだと思います。

久貝:でも、キャラクターはかぶっていませんよ。
澤田はアイデアマン、見た目は根暗ですが、メンバーを引っ張ってくれるリーダーです。 僕は体育会系(元野球部)に見られますが、堅実派なんです。澤田は色んなアイデアを沢山出すんですが、僕はそれを潰す役割です。(笑)そうやって、もう1人の副代表(濱村)と、リハガクを盛り上げてきました。濱村は岡山が拠点なので、今日はいませんが、彼も同級生です。

 

―― 卒業後も同じ病院で働かれていたのですか?

澤田:和歌山の回復期の病院に勤めていました。 回復期は、患者様の機能回復が顕著ですので、やりがいがありましたよ。患者様にリハビリを提供して、良くなってもらい、笑顔で自宅に帰られる姿を見るのは、本当に楽しかったです。僕は、朝が弱いので、家から近い原付で10分の病院を選んだのですが。(笑)

久貝:僕は、大阪の急性期の病院に勤めました。 大学時代の臨床実習が、脳神経外科で有名な某病院だったんですが、そこで急性期のリハビリに魅せられたんです。脳卒中を患った患者様が、どんどん良くなる現場を見て、自分もそんな職場で活躍したいと感じました。実は、臨床実習までは、療法士になることに、あまり熱意はなかったんですが、実習を通じて、熱意が漲ってきました。
初めのキャリアを希望通り、急性期の病院に勤めることができて、本当に良かったです。

 

―― 順風満帆な病院勤務に聞こえますが、なぜ病院を辞めて、起業されたのですか?

澤田:勢いです。(笑)
病院勤務の2年目の冬くらいに「何かやりたい」っておもったんです。その想いを久貝に話すと、久貝も同じ気持ちでした。また、2人に共通していたのは、「療法士として培った力(知識や技術)を、病院の外でも発揮できるんじゃないか」と考えていたことです。2人とも、学んだことをもっと色んな分野で活かしたい想いに溢れていたんです。

久貝:で、2人でやるよりも、3人の方が楽しいと思って、濱村も誘ったんです。さいわい、濱村も「何かやりたい」という気持ちがあったので、とりあえずは、3人で「何かやる」ことに決めました。  

 

 

毎月2万円の貯金箱で集めた資本金

―― 独立資金はどのようにして集めたのですか?

澤田:毎月1回、必ず3人で集まってそこで集金です。(笑)
3人の貯金箱を用意して、1人2万円ずつを貯めていきました。その集まりでは、「何をやるか」と「いつやるか」についても、話し合いました。僕は、病院で5年は勉強してからスタートすれば良いと思っていたのですが、普段は堅実派の久貝に「5年後じゃなくて、今やればいい」と突っ込まれたんです。久貝はやる時はやるし、言う事は言う奴なんです。(笑)
病院で過ごす3年弱と、独立して過ごす時間を想像すると、独立してモガきながらでもスタートすれば楽しそうだと思いました。ボーナス月は1人10万円を貯金したので、1年経たずに120万円が溜まりました。そのお金を資本金として、合同会社Laughを設立したんです。

 

―― 事業内容は決まっていたのですか?

澤田:はい。会社を設立する段階で、リハガク(セミナー事業)に決めていました。 事業内容が決まっていないと、具体的なアクションが取れないまま、コスト(家賃、人件費、活動費 等)だけが発生し続けます。それだと、資金ショートが迫り、焦って、考えることに集中できなくなってしまいます。

久貝:澤田はアイデアマンなので、色んなアイデアが出ましたよ。
例えば、モノ作りでは、骨折予防パンツの製作。あとは、介護用のオムツ、既存のオムツでは脱糞した側もそれをケアする側も、気持ち良くないので、うんちを包み込むような製品を作れば良いと言って、色々調査していました。
サービス業も考えていました。単身高齢者世帯向けの安否確認電話サービスや、鍵っ子の見守りサービス、澤田はOTが子守りをすることで、子供の発達を支援できるはずだと言っていました。

 

―― 色々アイデアがあったようですが、どうやってリハガクに決めたのですか?

澤田:決めるための観点を洗い出し、3人全員で合意を取りました。

  • 社会に貢献できること
  • 模範できるビジネスモデルがあること
  • 参入障壁が低いこと(資本金の規制なし、銀行借入・特殊スキルが必要ない)

この観点で絞り込み、リハガクに決めました。「何かやりたい」という気持ちがスタートなので、その何かを「考える」よりも、何かを「やる」ために動く方が、有意義な時間の使い方だと思ったんです。

久貝:リハガクは、病院勤務時代に感じた疑問がアイデアの源泉になっています。
当時、療法士の勉強会で目立っているのは、PTばかりだったんです。僕らは、沢山の勉強会に参加してきましたが、講師はPTばかり。そして、受講者も殆どがPT。 PTとOTの分野を区切るわけではありませんが、PTの講師が高次脳機能障害やADLについても話していたんです。日常生活動作は、OTの専門分野だと思いますし、そこはOTの講師にやって貰いたかった。「もっとOT頑張ろうよ、盛り上げようよ」と率直に感じた気持ちが、今のリハガクを形作っています。

澤田:戦略的なことも考えました。セミナー事業は、乱立していたので、差別化を考えました。
講師はOT、受講者もOTのセミナーはありませんでしたので、それが出来れば、差別化できると。色々苦労はしましたが、その甲斐あって、リハガクのセミナーは講師のほとんどがOT、参加者の70%以上はOTです。 「OTを盛り上げよう」という気持ちからブレずに、やってきたからこその結果だと思います。

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徹底的にこだわったのは講師の質

―― リハガクの運営で一番大変だったことは何ですか?

久貝:講師の選定です。
リハガクのみでなく、セミナーの参加費用は、1万円前後と決して安くはありません。だからこそ、リハガクは、かかる費用以上の価値を提供しようと、人間力、知識共に秀でた一流の方のみを講師として選定しています。単に知名度が高い(集客力がある)とか、講師をやりたい先生に頼んでいるわけではありませんので、講師の選定と登壇までの交渉には時間と労力が一番かかります。
リハガクでは、OTが勉強したいテーマを調査し、そのテーマに沿って、講師を選定していますので、場合によっては、都度、講師を選定し続けることもあります。

 

―― リハガクは拡大していく予定ですか?

澤田:はい。来年からセミナーを開催する拠点を増やします。
名古屋や関東を中心に、九州でも開催したいと考えています。セミナーは、同じ地域でのみ開催しても、参加頂ける方が限られてきますし、何より、セミナーの質には自信がありますので、良いものをより多くの方に届けたいとの想いです。なので、受講者の方々の満足度が高かったセミナーは、他の地域でも積極的に開催していく予定です。

久貝:リハガクのメンバーは、3人(澤田:発想力 久貝:行動力 濱村:調整力)とも得意分野が異なるので、それぞれの長所を活かして、次の展開を考えています。個人的には、次の展開も大切ですが、まずは、1つの会場を満員にして、受講者の方の満足度を高めることが第一だとも考えています。もちろん澤田含めリハガクメンバー全員で、決めたことなので、拠点数の拡大には挑戦しますが。    

 

 

療法士はもっと広い世界で活躍できる

―― 新規事業は行わないのですか?

澤田:直近では考えていませんが、「何かやりたい」と「療法士として培った力を幅広い分野で活かしたい」という気持ちでスタートしましたので、将来的には、療法士の力を最大限に活かせるような事業を興したいと考えています。 多くの療法士がその事業に魅力を感じ、自身も関わりたいと感じるような事業です。ただ、これは、抽象的ですし、3人がバラバラな考えを持っているので、メンバー間で話し合いながら、ブレずにやっていきたいと考えています。

久貝:自分たちの身の丈に合った事業がいいですね。(笑)

澤田:僕は、もっと療法士の力で社会問題を解決できると考えています。
例えば、企業でのパワハラ、障害者の就業斡旋、ホームレスなどの社会問題です。僕は、刑務所で服役者の方に対して、作業療法を行っているのですが、それも療法士の力で社会問題を解決できるだろうことの一例です。療法士は「問題に対して、評価を行い、原因を特定する」というアプローチに長けていますので、他の社会問題に対しても、同様のアプローチで解決できると思うんです。

 

―― 今後、療法士はどんな分野で活躍できるでしょうか?

久貝:予防(健康)の分野が有力だと思います。 この分野では、似たような職種が乱立し、その殆どがカラダのプロだと自負しています。ですが、僕自身は療法士として、知識と技術を磨いてきた自負があるので、その分野でもっと活躍できると考えています。 ゴッドハンドを目指すのではなく、療法士の中の当たり前の知識や技術を、的確に伝えることができれば、それは予防の分野で十分に価値があるはずです。Laughではその取組として、「らふ整体室」もオープンしました。まだ開始から間もないので、課題は山積みですが、一つ一つクリアしていきたいです。    

 

 

療法士をもっと夢のある仕事に

―― 若いセラピストが増え、色々悩む方も多くなると思いますが、何かメッセージはありますか?

久貝:最近は、療法士の仕事がロボットに代替されるのではないか!?みたいな噂までありますよね。(笑)
仮に現職で疲れてしまったなら、働き方・場所を変えてみるのは一つだと思います。療法士=病院勤務という既成概念に囚われず、病院が合っていないと感じたならば、他に活躍できる場所を探してみればいい。 行動してみると、療法士の仕事以外にも求人は沢山ありますので、療法士としてのキャリアに見切りをつけて、別の職種に転職することもできるはずです。

澤田:療法士は、職業柄、悪いところを見つけるのが得意ですからね。(笑)
職場の人間関係とか、いやな上司とか、上がらない給料とか。働いていると、色々嫌なことは見えてきますが、療法士の仕事ほど、「ありがとう」と言って頂ける仕事はなかなかありません。人対人のコミュニケーションの中で楽しいことも沢山ある仕事なので、良い一面に目を向けてほしいです。 若いうちは、わからないことだらけですが、想像力は豊かです。先輩からリハビリの方法を押し付けてられて、その通りに、仕事をしていても楽しくありません。自分で考えて、仕事をすれば、仕事はもっと面白くなるはずです。
僕らは、療法士をもっと夢のある仕事にできるよう、頑張ります。


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澤田 浩基 合同会社Laugh代表
2011年 大阪河﨑リハビリテーション大学 卒業
2011年 病院(回復期) 入職
2014年 合同会社Laugh(リハガク) 設立

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久貝 担矢 合同会社Laugh副代表
2011年 大阪河﨑リハビリテーション大学 卒業
2011年 病院(急性期) 入職
2014年 合同会社Laugh(リハガク) 設立

 

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合同会社Laughは、「リハガク」として、セラピスト向けの講習会・勉強会の企画、運営を行う傍ら、「らふ整体室」を運営する団体。 リハガクでは、講師のほとんどがOT、参加者も70%以上がOTで、OT業界を盛り上げることに尽力しつつ、一人でも多くの療法士が、確かな技術と知識を駆使して、人々に笑いのある豊かな人生を送ってもらうための社会作りに貢献しています。

  • リハガク:http://reha-gaku.com/
  • らふ整体室:http://laugh3.com/feature.html